Po! Vol.3

Po! vol.2
一歩先行く歯科医が共有したい事
山下歯科医院院長 山下 敦 先生
岡山県岡山市 山下歯科医院院長
岡山大学名誉教授
山下 敦 先生

「予防」こそが、約60年の研究の成果

研究、診療、教育と、長く歯の世界に身を投じてきた山下先生に、歯科の未来へのメッセージを伺いました。

伝えたいことはこの一言に尽きる

現在82歳。
これまで岡山大学の教授として、歯の補綴治療(総入れ歯・ブリッジ等)を中心に、研究・診療・教育を三本柱に半世紀近く歯科界に身をおいてきました。
ありとあらゆる歯に関する知識や技術を培いながら人生を過ごしてきた私が伝えたい、歯の健康のために最も重要なことはただ1つ。
それは虫歯や歯周病に罹らない「予防」なのです。
 予防が大切だと思うようになったきっかけは、患者さんの経過観察。
私はずっと総義歯の専門医をめざしつつ、診療と歯学生の教育にあたってきました。
大学卒業から10年が過ぎた頃、これまでに私が必死になって勉強し、学生に教えてきた通り治療を施してきたにも関わらず、多くの患者さんのクラウンやブリッジでの治療箇所が再治療や抜歯を余儀なくされていたのです。

 いったいどこに原因があるのか。
いろいろ模索するうちに、第1に口腔が不衛生であること、第2に歯を多く削ることが主因であると分かりました。
どうしても治療が必要な場合は「歯をなるべく削らない」ことが重要であるとの結論に至ったのです。
その後、岡山大学と株式会社クラレとの共同開発よって誕生した歯の接着剤を利用する「接着ブリッジ」という治療法を考案し、当時の厚生省から高度先進医療の認可を受けるなど一定の功績を残してきました。
しかし、これらはあくまで対処療法でしかないのです。原因を取り除く! 言い換えれば虫歯や歯周病の原因菌を歯に寄せ付けない「予防」をもっと広く伝えていかなければいけないという想いは、日増しに募るばかりでした。
 この春、岡山大学の新入生に最初の講義をしてきました。
「予防」の話をすると最初学生たちはずいぶん不思議に思うようですね。
「補綴の先生がなんで予防の話をするんだ?」と(笑)。
たしかに、私の専門は補綴です。
しかし虫歯の原因を取り除かないで、虫歯になってしまってから時間とお金をかけて治療(対処療法)をしても、口が不潔で虫歯菌が多く存在すると治療した歯がまた虫歯になり、治療を繰り返していく間にその歯は抜けます(「6回の再治療で歯は抜ける」が世界の平均)。
「予防」と「補綴」はある意味最も遠い存在であるとも言えます。
しかし、学生は話を聞くうちにわかってくるようで、講義の感想文には全員が異口同音に患者さんが利益を得る歯科医療、即ち「治療より予防で歯を残す」ことの重要性がよく理解できたと書いてくれていました。
このことは歯学生に留まらず、国民すべてに伝えていく価値があると思っています。

私をここまで導いたのは若き日から続く探究心

私は幼い頃から何をするにも熱中するタイプで、高校生の頃は音楽にのめり込んでいたのを憶えています。
個人ではバイオリンを習い、クラブ活動ではチューバを吹く毎日。
そんな私を見かねた両親が「音楽では食べていけない」と、歯科の道を勧めたのです。
そこで私は「歯医者になるからには卒業した時点で誰よりも立派な歯医者になろう」と、漠然とした目標ながら決意を固めました。
大学に入学してからというもの、文字通り死に物狂いで勉強。
その成果は成績にも表れ、同級生6~7人の宿題の義歯は私が作ってあげた事もありましたね(笑)。
他人がやっていないことをしようと、夏休みの宿題では「歯のスケッチ」を描き、歯を細部まで表現することに注力しました。
そんな探究心や熱意は、今も全く変わっていません。

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学生時代に書き溜めた「歯の細密スケッチ」

自己治癒しない「歯」を診る歯科医に本来求められること

少し前に、テレビ番組「世界一受けたい授業」に出演しました。
歯の噛み合わせについて諸々述べたのですが、今思えばもっと「予防」の大切さを伝えておきたかったですね。
実際私は、歯科医の治療の良し悪しで噛み合わせに影響が出るケースも多いと考えています。
また、そもそもの話ですが、歯は人間の体で唯一自己で治癒しない、つまり放っておいても治らない器官なのです。
風邪を引いたりひざを擦りむいたりしても、人間には自己治癒力がありますから、通常は何日かすれば回復に向かいますよね。
でも歯に関して、例えば虫歯は時間の経過とともに進行するばかりですので、何かあったら歯科医に掛かるしかありません。
多くの場合、完全に原因を究明・対処することなく、歯科医は歯を削って詰め物をして終わり、という治療(対処療法)しかできていないのが現状です。
何年か経てば、おそらくまた同じ治療を必要とする日が来るでしょう。
そうして歯は徐々に原形から遠ざかっていき、ついには「抜歯! 義歯の出番…!」となるのです。
こうして根本的な治療ではなく、詰め物や義歯などの「材料」ありきの対処療法が進んでいってしまった歯界そのものに問題があったと言えるのかもしれません。
普通、胃が痛いと内科に行けば、原因を突き止めて、それに効く薬を処方してくれるじゃないですか。
そんな当たり前の医療行為である原因療法が、歯科医ではほとんどなされていないのではないかと私は考えています。

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窓外に広がる景色の前、親身で丁寧な診察

「原因療法=予防」を歯科で確立していくために

歯科における原因療法とは、即ち「予防」です。ではそのために何をすべきか。
その答えの1つがPOICの除菌水による口腔の日常ケアだと思います。
きっかけは教え子からの紹介。
自分で顕微鏡を覗き、その効果を検証しましたが、明らかな菌数の減少が観察されたので信頼しています。
口腔をケアして虫歯や歯周病を防ぐ。
そんな行為がもっと当たり前の世の中になっていってほしいものですね。
 それでも「予防」を伝えていくことは難しい。
例えば講演などで歯科医たちにその大切さを伝えても、その場で賛同してくれる方は多いのですが、いざ自分の歯科に戻ってみればいつも通りの治療が続く…。
悔しいですが、これが多くの歯科の現状です。
これを何とか打破するためにも、これからは原因療法に関連するデータ集積に加え、そうした歯界の仕組みを改革するようなアプローチも必要ということだと思います。
82歳にしても、課題は山積み。
人生まだまだやるべきこと、学ぶことは多い…なんて思っていますよ。

山下歯科医院院長 山下 敦 先生
Profile ● 
1958年に大阪歯科大学に在籍後、岡山大学教授に就任。研究、診療、歯学生の教育に尽力する。「接着ブリッジ」(平成20年4月健康保険に導入)などの考案で、歯科界に大きく貢献。1998年に自宅に診療所を設け、2001年には日本歯科医学会会長賞、2016年に岡山県文化賞を受賞。著書には、「最新歯科補綴アトラス」、「最新生理咬合学と顎関節症の治療」、「歯科接着性レジンの基礎と臨床」など多数。
歯科医直伝健康法 [其の三]ストレスフリー
イラスト

先生が日々実践されていて、皆さんにオススメできる健康法をご紹介します。

本来なら「ストレス発散法」となるのでしょうが、歯と同じく、ストレスも「予防」することが健康のために最も良いと考えています。
そのためには、興味を持っていることや好きなことに積極的にふれることが大切です。
例えば私は、顕微鏡が大好き。
未知の事象を発見する快感を知っていますので、研究関係の仕事はまさに天職でした。
他にも、趣味としての音楽、釣り、狩猟など、人生を楽しむ術をたくさん持っています。
好きなことをしていれば、少しくらい嫌なことがあっても大丈夫なものですよ。

ポイント1 できるだけ大げさに、声は少しでOK!

ポイント2 1セット4秒前後のゆっくりとした動作で!

ポイント3 1日30セット(3分間)を目標にスタート!

ポイント4 顎に痛みのある場合は「い~う~」でもOK!

ジモティ医が選ぶ「3大地元名物」!プチ旅のしおり 第三便 岡山、桃太郎の旅
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取材で訪れた土地の名物や名所を少しだけ紹介。地元ならではの価値ある情報をギュッと凝縮してお届けします。

閑谷学校
1670年に創設された、現存する世界最古の庶民のための公立学校。史跡見学はもちろん、国宝でもある講堂で学習体験をすることができる。2015年には日本遺産に認定。

後楽園
「桃太郎」の故郷として知られる岡山は、言わずと知れた桃の名産地。「清水白桃」などに象徴されるように岡山の桃は白さが特徴で、白桃に限れば、その生産量は日本一。

あらかわ遊園
日本三名園の1つ。日本らしい美が感じられると外国人観光客からも人気があり、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでは三ツ星に認定されている。

豊かさに繋がる「先進!健康事情」くちは健康のもと。
代謝に! 消化に! 免疫力に!酵素は健康体の必需品!
収穫の秋。その味覚の代表として、美味しい果物を思い浮かべる人は多いのかもしれません。
果物といえば、最近「酵素」を耳にすることが多いと思いませんか? 

ダイエットや健康に関連して、現在多方面で話題を集めています。
そもそも酵素とは、簡単に言えば「生命維持に必要不可欠なたんぱく質の一種」です。
酵素には消化酵素、代謝酵素、食物酵素の3つが存在し、それぞれ名前の通り、体内の消化や代謝を助ける役割があります。
そのうち食物酵素だけは体内で生成されないため、食事から摂取しなければなりません。
食物酵素が不足すると、代謝や免疫力の低下、消化不良、下痢や便秘を引き起こすといわれています。
ただ逆に考えれば、食物酵素を十分に摂取することで免疫力や消化機能などに好影響をもたらすことができるため、健康によいとされているのです。
果物類はもちろん、野菜や発酵食品にも多く含まれています。
ただし、酵素は熱を加えると消滅してしまう特徴があるので注意しましょう。
この秋、酵素を取り入れた食生活で、健康を意識してみてはいかがですか?

メモ
バリーさん
果物はヘルシーなイメージだけど、果糖が多いので肥満が心配。
酵素を意識しつつも、食事はバランスを心掛けよう!

未来ニブンカ.3
ワタシに、クラシに、新しい文化を!
日々の暮らしの中で、いつもと変わらず何気なく過ぎて行く出来事や
触れているモノに、もう少しだけ近づいてみませんか?
それはきっと、あなたの新しい文化となり、未来を豊かにしてくれるはず…。
イラスト
((100%健康みかんジュース))
朝の食卓に並ぶ手作りのジュースから始まる一日は、健康的で少し贅沢な習慣です。
庭の果樹からの採れたて果実があればそれは素敵ですが、旬の季節に手に入る様々な果物を絞る楽しみは、日頃の疲れを癒してくれ、その日をフレッシュな気分で過ごすことができそうです。
天然果汁100%! 作り方は簡単なので、家族と一緒に、会話や音楽を楽しみながらできるのも魅力です。
手軽に楽しむならレモン絞り機。
またミキサーを使えば、食物繊維をより多く摂取できます。
本来の甘味で満足感を得られ、糖分を控えることができ、食物繊維が胃の中で水分を吸収するので、満腹感が持続し、ダイエット効果も期待できそうです。
シーズン後半、余ってしまった果物もまとめてジュースにして、加熱殺菌して冷蔵庫に保存したり、凍らせて長期保存することもできます。

はじめの一歩、まずは「ここから」。

❶さぁ、みかんの収穫だ!
目安は、よく日に当っていて色の良いもの、早生みかんであれば触った感じがしんなりしていて、小粒のもの、細い枝に成っているヘタの部分が小さいもの。

❷下ごしらえ
みかんの皮をむいて、小房に分けてミキサーに。薄皮を剥いておくとなお良い。

❸絞り機orミキサー
絞り機はスクイーズするだけ。ミキサーは約2分撹拌。氷を入れれば冷たく出来上がる。

❹アクセントに
酸味が足りない時は、レモン汁を。甘みがたりない時は、砂糖を加えてみる。

❺一緒に作りたい!
パートナーやお子さんと一緒に作ると楽しい。友だち同士で、色々な果物や野菜を持ち寄ってジュースパーティに。

❻一緒に味わう楽しみ
サラダやシリアルなど、一緒に食すものにもこだわれば、さらに豊かな時間に。

❼その後は…
加熱殺菌して冷蔵庫で数日間保存。冷凍すればアイスキャンディや長期保存も可能。

果物以外にも野菜ジュースや酵素ジュースなど、多くのバリエーションが楽しめるのも魅力。ぜひ、十八番のメニューを!

ポッとひといき…ブレイク &スルー たまには、小さな「味わい」を
イラスト

「未来ニブンカ!」コラムと一緒に、実際の「味わい」もお楽しみください。

枝葉の間から溢れる日差しに目を細めつつ、食べごろの綺麗な実を探す魅惑の時間…。
長い歳月をかけて大きくなった庭の果樹。そこに実が生った時の感動は、宝物を見つけた時のような大きさだ。
その果実をどうにか想い出として残そうと始まったジュース作りは、次第にもっと美味しくできないものか、他の果樹も育ててみようか…と広がっていく。
小さな庭で育まれたホームメイドという楽しみは、やがて巡る季節を感じ、その年の出来映えに自然の不思議さを考えさせられる、有意義な行事となった。
たくさんの恵みに感謝し、作る楽しみと戴く喜びを家族と分かち合える。
それは、昔から続いてきた生物の連鎖であり、人間としての当たり前の生活なのだと思える。