Po! Vol.4

Po! vol.2
一歩先行く歯科医が共有したい事
東京クリニック副院長 照沼 裕 先生
東京都千代田区 東京クリニック副院長
照沼 裕 先生

「口腔ケアでがん予防」が、そろそろ当たり前になる

がん治療における免疫細胞療法の権威である照沼先生に、免疫と口腔ケアの関係性についてお話を伺いました。

体内のお巡りさんNK細胞の重要性

がん治療・予防は、今や口腔ケアから始まる時代です。
口と全身の健康は密接に関係していると言われて久しいですが、私の専門であるがん医療の分野でも同じことが言えるでしょう。
それを理解いただくためにも、まずはがんと免疫の関係について簡単にお話しします。
私が現在東京クリニックにて行っているのは免疫細胞療法。
がんの治療、もしくは発生を抑制するために、患者さんのがんに対する免疫力を高める治療です。
患者さんの血液を採取した後、血液中のある細胞を培養し、体内に戻すといういたってシンプルな方法で行います。
ある細胞とは、ナチュラルキラー細胞(以下NK細胞)のことです。
NK細胞はがん細胞に対する免疫力が高く、体内ではがん細胞を取り締まる「お巡りさん」のような役割を果たしています。
つまり私は、その「お巡りさん」を増員したり訓練したりして、体内の警備をより厳重なものにしているんですね。
2000年、NK細胞と発がん率ついて、埼玉県のがんセンターにて興味深い調査報告がありました。
40~80歳の3625人の男女を11年間追跡したところ、NK細胞の活性が低い人は、通常及び高い人に比べ2倍近くの人ががんを発病したのです。
このことから、がんを予防するための1つの要因として、NK細胞の活性の高さが重要であると言うことができます。
また、NK細胞のがん治療における有効性も認められています。
がん治療のため患部の切除手術を行うと、術後1週間はNK細胞の活性が著しく低下するのです。
つまり、その期間はがんの転移が非常に起きやすい状態になってしまいます。
マウス実験で術後のNK細胞の活性を高めた群とそのままの群を比較すると、やはりそのままの群はがんの転移がより多く見られたという報告もあります。
これらのことから「NK細胞の活性を高めること=がんを遠ざけること」という図式ができあがるのです。

歯周病が免疫力の低下を招く

NK細胞の活性は20歳頃をピークに徐々に低くなっていき、これと反比例するように発がん率は高まります。では、NK細胞の活性を体外培養以外で高める、もしくは維持する方法はないのかというと、そんなことはありません。睡眠、食事などのバランスのとれた規則正しい生活、ストレスを溜めないこと、笑うこと、森林浴などいろいろとあるのですが、その最たるものとして挙げられるのが口腔ケアなのです。

特にNK細胞の活性を大きく妨げるのが歯周病。
「お巡りさん」であるNK細胞は歯周病に対しても働くのですが、逆に言えば、その間はがんに対する働きが手薄になるのです。
例えば、体内に100人の「お巡りさん」がいるとします。
通常は全員でがん細胞を取り締まっているのに、歯周病対策に50人が向かったら、がん細胞対策は残りの50人で行わなければなりません。
歯周病による口内の炎症面積は手のひら1枚分といわれており、実に多くのNK細胞がある意味無駄に使われてしまうのです。
がん細胞は、毎日体の中で数千個生まれているといわれています。
NK細胞をしっかりとがん細胞へ働きかけさせるため、日頃から歯周病予防を中心とした口腔ケアを心掛けることが大切です。
アメリカで約5万人を18年間追跡した調査でも、歯周病の人は発がんリスクが有意に高くなるという結果も出ています。
他にも、がん手術後の合併症発生率の低下や、口内炎・肺炎の抑制、食事や会話の潤滑化など、口腔ケアの有用性は枚挙にいとまがないほど多くの例が報告されているのです。

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東京駅丸の内北口すぐの好立地が、診療を身近に。

口腔ケアを習慣に

例えば、病院には病気にならないとなかなか行く機会はありません。
でも歯医者であれば、検診など気構えずに行くことができますよね。
そこで定期的に口腔ケアを行えば、免疫という観点から見ても、がんを含めたかなりの病気を予防することにつながると思います。
また、私が個人的に実施しているのが、POICの除菌水によるケアです。
私は普段、歯ブラシには歯磨き粉はつけず、このPOICの除菌水を少量口に含んで歯と歯茎の間をマッサージするように歯磨きしています。
もはや口の健康は、全身の健康にとってとても大切なことだと思っています。

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先制医療で病気の予防に貢献したい

NK細胞の体外培養を中心とした治療法は、今後はもっと予防の段階で役立てていきたいですね。
国内の平均寿命が延びているなか、日常生活に制限のない毎日が送れる健康寿命のそれとは約10年の差があります。
それは病名がつくほど病気が進行してから対処することに終始しているからであり、発病を予防するという「先制医療」の考え方がもっと広く認知される必要があるでしょう。
その点、NK細胞は活性レベルを簡単に測定できます。
その値が低い場合、忙しくて生活習慣の改善が難しい人や、発がんリスクが心配な人は、定期的に体の大掃除をする感覚で利用してもらえれば幸いです。
さらに個人的なところで言えば、免疫の研究を進め「がんはすべて免疫で治る」という世の中にできたらこの上ない喜びですね。
何かのご縁で私のところを訪ねてくれた患者さんには、せっかくなら皆元気で長生きしてほしいじゃないですか。
そんな思いが、私の医者としての最大のモチベーションであり、さらには健康長寿社会を実現する一助となればと思います。

東京クリニック副院長 照沼 裕 先生
Profile ● 
1989年、東北大学大学院医学研究科博士課程修了。現在東京クリニックと総合南東北病院で診療をする傍ら、研究所で日々免疫細胞や幹細胞の研究に従事。主にがん医療における免疫細胞療法やハイパーサーミア(温熱療法)と幹細胞を利用した再生医療の臨床研究を行っている。
歯科医直伝健康法 [其の四]笑う!!
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先生が日々実践されていて、皆さんにオススメできる健康法をご紹介します。

どんな方法でも構わないから、とにかく笑うこと。
これさえすれば、NK細胞の活性が高まるという研究報告があるのです。
大声を出して笑う、やさしく微笑むようにして笑う、口に箸を挟み口角を無理やり上げて笑う……もちろんこのどれでもOK。
特にがん患者さんは、なかなか笑えなくなりがちです。
でもそんな状況だからこそ明るく笑って、気持ちからがんをやっつけましょう! 
普段からよく笑っている人は免疫力が高く、きっと長く健康でいられるはずですよ。

ジモティ医が選ぶ「3大地元名物」!プチ旅のしおり 第四便 東京駅周辺
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取材で訪れた土地の名物や名所を少しだけ紹介。地元ならではの価値ある情報をギュッと凝縮してお届けします。

インターメディアテク
商業施設KITTEの2階と3階にある総合ミュージアム。東京大学の骨格標本・博物標本などの学術文化財が常設展示で楽しめる。入場無料も嬉しい。

イルキャンティ日本橋店
三越前駅近く。豊富なワイン、自家製ドレッシング、ソフトシェルクラブなど、本場のイタリアンをカジュアルに楽しむことができるレストラン。

デパイチスイーツ
大丸東京店1階にある和洋菓子売り場。洋菓子なら入り口付近に店舗を構える「ねんりん家のバームクーヘン」、和菓子なら売り場奥に位置する「満願堂の芋きん」などが人気。

豊かさに繋がる「先進!健康事情」くちは健康のもと。
健康になるためのトピックが花盛り! 腸内フローラを意識しよう。
私たちの腸の中には1000種類以上の細菌がいて、その数は100兆個以上ともいわれています。
これらが腸の中で群生する花畑に見えることから「腸内フローラ([英]flora)」と呼ばれているのです。
腸内にいる細菌の種類や数は、人種、年齢、食生活などによりそれぞれ違いますが、腸内細菌には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の大きく3種類があり、これらを2:1:7のバランスで保つことが理想とされています。
日和見菌は優勢な菌の味方をする作用があるので、大切なのは善玉菌が悪玉菌より優勢であることです。
このバランスを崩すと、体へのあらゆるリスクが高まります。
例えば、免疫力の低下、肌荒れ、老化、うつ、各生活習慣病、がん……など、枚挙にいとまがありません。
そこで、まずは普段の食生活から善玉菌を意識してみましょう。
ヨーグルトなどの発酵食品に加え、善玉菌のエサになるオリゴ糖を摂取するのも効果的。
腸内フローラを意識することは、上記リスクを低減するだけでなく、整腸作用や体質改善、ダイエットなど、イイコトづくめなのだそうです。
メモ
バリーさん
人間の腸の表面積は、広げるとテニスコート1面分にもなる。
それを考えれば、腸が体にいろいろと影響するのも当然!

未来ニブンカ.4
ワタシに、クラシに、新しい文化を!
日々の暮らしの中で、いつもと変わらず何気なく過ぎて行く出来事や
触れているモノに、もう少しだけ近づいてみませんか?
それはきっと、あなたの新しい文化となり、未来を豊かにしてくれるはず…。
イラスト
((ウォーキン、ジョギン、事始め))
例えば寒い冬の朝、眠くて布団の中で丸くなっていたい体を伸ばし、「ジョギングに出掛けよう」とは、なかなか思えないものです。
「いやー、やりたいとは常々思ってるんだけどね」なんて声もよく聞きます。
どうやら、きっかけが難しいようですが、エスカレーターを使っていたのを階段にしたり、車で行っていた図書館に歩いて行くことなどは、比較的すぐにできそうな気がします。
無理のない小さなことからはじめてみれば、健康や出会い、四季を感じたり、見慣れた景色への再発見など、実に多くの楽しみや実感が持てることに魅了されるでしょう。そうやって長く続く習慣にできればよいのですが…。
健康のためにウォーキングでも…とはじめた習慣が、ジョギングからマラソンへ、ハイキングから登山へと、その魅力と見晴らせる境地をどんどん広げていく人も少なくありません。

はじめの一歩、まずは「ここから」。

❶いつもの習慣を少し変えてみる
ちょっと階段を使おう。今日は歩いてみよう。そんな軽い気持ちで、まずはいつもの習慣にアクセントをつけることから。

❷無理をしないスタンスで
「毎朝」とか、いきなり「長い距離」とか、体育会系の目標を立てる前に、「土曜は」「あそこに行くときは」など、無理ない範囲で。

❸寄り道や回り道をしてみる
いつものルートを変えてみる。それだけで新しい風景に遭遇したり、思いがけず素敵なお店に出逢えるかも…。

❹格好つけてみよう!
ウェアやシューズなど身につけるものに拘ってみると、案外に気分があがります。

❺目標を設定してみよう!
余裕が出て来たら、「あそこに行ってみよう」「月に○○km」など、楽しみにできる目標を。

❻一緒に歩けば傍に
一人もいいですが、ともに歩む人と景色を共有するのも素敵です。

❼ハマるかもしれません…
ストイックになりすぎて膝や腰を傷めないように…。健康的に楽しみましょう!

姿勢よく歩く事は、体の調子を整えることに繋がります。また適度に走ることは、体と精神を活性化します。運動のサイクルを、健康のサイクルにしていきましょう!

ポッとひといき…ブレイク &スルー たまには、小さな「味わい」を
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「未来ニブンカ!」コラムと一緒に、実際の「味わい」もお楽しみください。

あの角を曲がれば、この坂を上ったら、目の前にどんな風景があらわれるのだろう、という小さな期待。歩いて、立ち止まって、その度に眼前に広がる街の彩りや人の流れは、あたかも自分が創り出した景色のようだ。
そして地形のアップダウンや距離感、気温や湿度など、肌に感じ、足に響いてくる感触が心地よいものだと、あらためて気付く。
車を使うことが増えて、歩いてないなぁ…。電車での移動中も、スマホや本を見ていて窓の外を眺めることが、少なくなってきたなぁ…。
効率の良い過ごし方を競ったり、「あれを見とけ」「これも知っとけ」と情報が溢れ、世間はなかなかに人を急かす。
たまには軽い靴に履きかえて、柔らかい気分を携えて、今日出逢える景色の中で、明日に繋がる創造の風景を心に描こうと思う。