米山歯科クリニック 院長
米山武義
デンタルDr. 最前線
これからの歯科医療関係者は、
口腔ケアを通して、
心も開いていく
米山歯科クリニック 院長
特定非営利活動法人POIC研究会 会長
米山武義
1979年
日本歯科大学歯学部卒業後、同大学助手(歯周病学教室)
1981〜83年
イエテボリ(スエーデン)大学歯学部留学
1989年
伊豆逓信病院歯科(非常勤)
1990年
米山歯科クリニック開業
広島大学・東京医科歯科大学・昭和大学・松本歯科大学・北海道医療大学・浜松医科大学 非常勤講師・日本歯科大学 客員教授、臨床教授
静岡県歯科医師会・老年歯科医学会理事・日本老年歯科医学会 指導医、専門医
住所:静岡県駿東郡長泉町下土狩1375-1 電話:055-988-0880
生活を支え、生きる意欲を引き出す歯科治療
米山先生のこだわりは、口からはじまる心と体の歯科医療の提供
地元で歯科医院を開業していくということは、地域の患者さんの支持、支援があってこそ成り立っていると思っています。
技術がいかに優れていても、優秀で有名な先生であっても、それだけでは患者さんは受け入れてくれませんよね。
医師として上から目線ではなく、患者さんと平らな関係を築きながら、私が学んできたことや、いままで検証してきたことを、患者さんに提供する。それを患者さんに選んでいただくのだと思っています。
歯科医院は、行きたくない場所のひとつなんですね。
耳障りなタービンの音や無口な先生がマスクをしているとかスタッフの愛想がよくないとなると、歯が痛いから行くけど、痛みがなくなれば、もう行きたくない場所ですよ。
でも気軽に健康相談まで、できるとなれば、歯が痛くなくても行きたいと思いますよね。
しっかり時間をとって、お口のメンテナンスと心のケアを提供
うちの医院には、治療後のメンテナンスのためのコーナーがあります。
歯周病の管理や、さらにむし歯や歯周病が進行することを防ぐためのサロンです。
メンテナンスだけでも、ゆうに40〜50分かかります。
それでも高齢者の方が喜んできてくださるのです。
メンテナンスの間中、歯科衛生士がしっかり話を聞いています。
医療職の人間が、その方のためにしっかり時間をとるわけです。
ある男性(80歳)の患者さんは、奥さんを亡くして、ひとり食事をポツンと食べるのも辛くて、死にたいと言うのです。
私が「生きて行くのが辛いのに、歯のクリーニングをする意味ないんじゃないですか」と、あえて刺激するように言うと叱られました。
「先生、そうじゃないよ。ここに来て、先生や衛生士さんが話を聞いてくれるから、心が軽くなるんだよ。生きる元気をもらいに来ているんだ」と言われました。
歯科医院に来て、歯周病が管理されて、さらに生きる元気をもらって帰るなんて、すごいことじゃないですか。
歯科医療というと歯を治すだけと思いがちですが、究極、医療の本質は心だと思っています。
心のケアまで、ちゃんとできる歯科医院でありたいと。
幸いなことにスタッフも、心の医療に重きをおいてくれていますしね。
口の働きは数々あって、口は健康の入り口なのです
口の働きっていっぱいあると思うんですね。
たとえば、食べるため。
我々は生きていくために食べ物から栄養を摂ります。
その入り口であると同時に、息をするときにも口を使います。また噛むだけではなく、見た目も、すごく重要なところです。さらに心の感情を表出するという働きもあります。
歯と口腔の働きでは、たとえば重い物を持つとき、しっかりかみしめて、ぐっと持ち上げます。
また常に口の中には唾液が出ていて、この唾液が味覚を左右し、美味しく味わうための一つの媒体になってくれています。唾液には消化酵素の働きがあり、唾液のアミラーゼが消化の働きをしてくれています。
口内消化ですよね。
私たち歯科医は、口の中からすでに消化は始まっていると考えています。
ストレスの発散という点では歯ぎしりをするとか食いしばるといいますが、それはある意味で、ストレスを解消したり開放するために、自然に行ってる人間の動きだと思います。
そういう面で歯と口腔は、すごく大事なところで、言葉を出すという重要な働きもあり、もし数本歯がなかったら、息が漏れて言葉が人に上手く伝わらないのです。
口は健康の入り口、心の出口。
心の出口は口?
心はどこにあるのでしょう。
心臓にあるという人もいるし、みぞおちにある、「いや、脳だ」という科学者もいて、いろいろな説があって、それは分かりません。
でも少なくとも、口から出て言葉を介して伝わるわけですよね。
自分が常日頃、思ってることが言葉として出る。
その吐き出した言葉によって、相手が傷ついて自殺するかもしれない、打ちひしがれる人もいるかもしれない。
言葉を出すことによって、生きる意欲を回復して、人生やり直そうと思うかもしれない。
口は災いの元といいますが、口が悪いわけではなく、口の先に潜んでる心の部分ですよね。
ずっと口の大切さが軽視されてきた
私は口腔衛生の予防効果の検証を長い間、続けてきました。
しかし、その重要性はなかなか受け入れられず軽視されてきました。
しかし、高齢化がどんどん進むなか、健康障害を持つ人が増えてきたことや歯周病の研究が進むなか、ようやく口腔衛生に目が向けられるようになってきました。
口腔内細菌が体中を廻り悪さをすることもわかってきました。
歯周病と、心筋梗塞や糖尿病などの関連性も分かってきました。
予防型・健康型のクリニックに一番近い位置にある歯科医院だからこそ
内科へ行けば、必ずお薬がでます。
効果があるかもしれませんが薬は諸刃の刃です。
治療のために飲むのですが副作用が生じる可能性もあるし、ときには何種類ものお薬が出ますよね。
薬は肝臓で分解されて腎臓でろ過され、おしっことなって排出されます。
が、薬って基本的に毒にもなるわけですから、それだけ効果を発するというのは体に無理がかかるわけです。
歯科は抜歯をした際の、痛み止めや抗生物資を出しますが、基本的に薬はあまり使わない医療の分野だと思います。
そういう点で予防型、あるいは健康型医療といえる。
予防と健康を提案できる未来型の医療機関に歯科はなれるんじゃないかなと思っています。
そのためには、歯科医師もスタッフももちろん技術を磨いて、心も磨かなくてはいけない。
人は食べることから健康維持がはじまり、社会性が育まれます。
生きることの基本は食べることです。
「口は健康の入り口、心の出口」だから、大切にしなければならないのです。
人生をまっとうするための歯科医療
歯科治療が貢献する「健康の維持と生活の向上」
私たちが運営する特定非営利活動法人POIC研究会では、口腔感染症および合併症を予防することで、健康維持、生活の向上を図り、超高齢社会において医療等の適正化に貢献することを目指しています。
その一環で考案した「POICウォーター」を、私は医院内、在宅ケア、高齢者施設での口腔ケアに積極的に使っています。
在宅医療も、また健康づくりという視点で捉えています。
家で介護、介助されている方に、いま以上に快適な日常を送って欲しいと願っているからです。
自宅でケアをされている場合、家族にかかる負担は大きなものがあります。
また寝たっきりの環境から、つい不衛生になりがちだったり、細部にまで目の届かないこともあり、2次感染を起こす可能性もあります。
POICウォーターは口腔ケア以外の除菌にも、使用できます。
出血、炎症が命を脅かす
忘れられないエピソードがあります。
ご主人が筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病で奥さんが介護しておられました。
どんどん筋が動かなくなってしまう、たいへん辛い病気です。
でも、頭はしっかりしているんですね。
その生活は長く続きますので、ご本人、奥さんもほんとうに大変です。
介護している奥さんから電話がありました。
「主人が呼吸器感染、肺炎を起こしたらもう命が終わります。どんなことしても口の管理をして肺炎を予防したいのです」というのです。
歯ブラシは先生に言われたようしているし、本もいろいろ読んだ。
歯間ブラシが良いと何かで読んで使ってみたが、右上の2番の出血が止まらないと。
たしかに、ちょっと触診をしても出血します。
このまま放っておくと菌が体に回ってしまう可能性があります。
肺炎を併発する可能性もあります。
なにかできることはないか……、どうしたものかと……「そうだ。我々の研究会で考案した除菌水を使ってみますか」と使い方を説明し、刺激の少ない小さいサイズの歯間ブラシも一緒にお渡ししました。
1日、2日経った頃です。
「あれほど強い出血が止まりました。もう見事です。魔法の水です」と電話を頂きました。
口の中のたった1か所の出血、炎症ですが、ALSの患者さんの命に関わります。
介護されている方の多くは、ちょっとした体調不良が重篤な症状となるケースもあります。
口腔ケアは、けして口の中だけに留まる問題ではないのです。
その後、その方の歯肉を診査しましたが出血する所は一切ありませんでした。
「POICウォーター」は、やはり奇跡的な効果を発揮してくれました。
この「POICウォーター」(次亜塩素酸水)は感染しやすい方、口臭のする方、虚弱な方に500ppm濃度のものを歯ブラシにつけてケアしてもらっています。
在宅医療の現場で、ご自分でケアができない方が多いので、主たる介護者に説明しています。
移動は困難だけど、手が十分に機能するという方であれば、できるだけ自分で磨いてもらうようにしています。
歯磨きもリハビリの一環です。
使った感想は、とにかく口の中がさっぱりして、やみつきになるという感想もいただきます。
キーエイジを見逃さずに健康管理ができれば医療費、家族の負担が減る
ここ最近、高齢者の方が非常に多くなってきています。
直近のデータだと、診療室に通う人の約4割が、65歳以上という統計も出てます。
これからもっと多くなると思います。
健康管理という点では、60代が、その後の健康を考える上で、大事なキーエイジになると思います。
このキーエイジに、しっかり自分の健康管理をしていけば、その後の人生が、かなり変わってくると思います。
具体的には、医療費や家族の負担、自分らしく生きること等が、大きく違ってきます。
体の一部に過ぎないと思われてきた「口」こそ、人間らしさを表す、もっとも重要な器官だとの認識が高まっていけば、歯科医としては嬉しい限りです。
おそらく未来型の歯科医院は、むし歯、歯周病は予防がメインになり、心の健康面も含めた「健康相談」の場として患者さんに受け入れられるのではないか。
体がだるい、体調が優れないときは「内科へ行こうか、いや、歯科でメンテナンスを受けてみよう」と、そんな全身の健康管理の一翼を担うのではと思っています。
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在宅でも肺炎予防
メンテナンスが歯科医院の中だけで終わってしまっている!
多くの歯科医師は従来型の開業形態をとっています。
来院することができる患者さんだけではありません。
長年メンテナンスをしてきた患者さんが来院できなくなったらどうするか。
残念ながらほとんどの歯科医院では、縁が切れてしまっています。
歯科治療の究極のゴールは、たとえどんな環境になっても、歯周病を再発させるプラークを、セルフケアとプロフェッショナルケアの両面からコントロールしていくことです。
メンテナンスは、歯科医院の中だけで終わるわけではありません。
家庭においても、療養を受ける環境になっても、病院に入院することになっても、継続してコントロールされ、初めてそのゴールを勝ち得るのです。
現代歯周病学では、メンテナンスをもっとも重要視しますが、高齢者のメンテナンスをどう在宅における肺炎予防に繋げていくか、老年歯周病で取り組むべき大きなテーマです。
ここにもPOIC研究会の進むべき道があります。
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切羽詰まっている問題に目をそむけてはいられない
高齢者の残存歯の数が急増している1989年に始まった「8020」(80歳になっても20本以上自分の歯を保とう)運動。
当初は達成不可能なスローガンだと思っていましたが、高齢者の残存する歯の数は驚くほど増加して、あと数年以内に50%に達する勢いです。
同級生に聞いても5本以上、歯を失った人は誰一人いません。
私は、長年在宅医療に関わっていますが、ほとんどの患者さんは口腔内の衛生状態が低下し、歯周病をはじめ口腔感染症がみられます。
さらに、飲み込みに問題があり、発熱を繰り返す患者さんもたくさんいらっしゃいます。
自分の歯の残存数が上がったことで、皮肉にも在宅で生活する患者さんの歯周病の発症リスクが上がっているのです。
そして肺炎による死亡者が増えるかもしれない。POIC研究会の存在意義の一つは、ここにあります。
POIC Topics
いつ社会問題化するかわからない
歯科診療ユニット内 汚染を食い止める
最近の歯科医院に対する患者様の評価は厳しいものがあり、医療技術は元よりその前段階の医療安全についても高い関心を寄せるようになりました。
多くの歯科診療ユニット内を流れる水は想像を絶する汚染が進んでおり、もしこの事実がマスコミに流れ、インターネットを通じて情報が拡がった場合、歯科医療業界が窮地に立たされるのは火を見るより明らかです。
一方この事実が歯科医師会雑誌(日本歯科医師会雑誌Vol.61 No.92008-12)にも掲載されたにも関わらず、早急に手を打たねばならないと思っている歯科医師の数も残念ながら多くはありません。
また、2015年8月25日付の読売新聞夕刊に下記の記事が掲載されました。
この現実に直面した時、ゾッとする思いがするのと歯科医院を信頼してくださる患者様方に申し訳ないと感じます。
POIC®研究会の会員は当たり前の事として、ユニットを流れる水の管理に気を配り、患者様、医療提供者双方の感染予防に努めて頂きたいと思います。
そしてもし、マスコミにこのような情報が流れた時でも、しっかり感染予防対策を打ってありますと胸を張って言えるように準備をしておいてください。
もう一つは専門的口腔ケアを通して、口腔内の感染症と口腔からの合併症の効果的予防方法を基準化する事です。
POIC®(専門的口腔感染症予防)研究家HPより
*法律では水1ccあたり菌が100個以内でないといけません。
*調査:米国CBS(1999)・米国ABC(1999)・東京医科歯科大学(2000)日大の治療水調査(2001)など多数報告。
POIC®研究会認定施設は当会の定めた厳しい「歯科用ユニット治療水の細菌数『0』基準をクリアしています。