POIC WORKSHOP Vol.8

POIC WORKSHOP VOL.8

歯科治療水安全認定施設・歯科医院/ドクター・臨床検査技師紹介

小峰歯科医院 院長

小 峰 一 雄

ドックベストセメント療法の第一人者が語る
歯の寿命を延ばす「予防歯科プログラム」の重要性

小峰歯科医院 院長

デンタルDr. 最前線

ドックベストセメントの第一人者
最先端歯科治療を可能にする
予防歯科プログラムの重要性

小峰歯科医院 院長

小峰 一雄

  • 城西歯科大学(現明海大学歯学部)卒
  • 小峰歯科医院理事長
  • ラオス・ヘルスサイエンス大学客員教授
  • POIC研究会臨床顧問
  • ドックベスト研究会会長
  • 日本全身歯科研究会会長
  • Kデンチャー研究会 主宰
  • 日本抗加齢医学会認定医(専門医)
  • 日本アンチエイジング歯科学会認定医
  • 日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会
  • 日本口腔診断学会、国際口臭治療学会
  • ICD(国際歯科学士会常任理事)
  • フェロー AAP(アメリカ歯周病学会)会員

住所:埼玉県比企郡ときがわ町玉川2469  電話:0493-66-1118

www.ksky.ne.jp/~komine/

 私は長年、予防歯科治療に力を注ぎ研究を重ねてきました。その結果、歯の健康と体の健康がいかに密接に関わっているかということがわかってきました。そもそも予防治療に取り組もうと思ったのは、「削る虫歯治療」に私自身が失望したからです。歯科クリニックを開業したころは、多くの患者さんの歯を治そうと情熱を持って取り組んでいましたが、開業して数年経ったころ、以前治療した虫歯が「再発した」「治療した歯が折れた」と再来院する患者さんが増えたのです。治そうと治療を施したはずの歯がです。「歯を削れば削るほど患者さんの歯の状態が悪化しているのでは?」歯科医としての自信を失いかけ焦りを感じた私は、答えを求めて毎日曜に勉強会に参加し問題の解決法を必死に探しました。しかし、どんなやり方も結果は大差なく歯の状態が良くなることはなかったのです。
そこで思い切って患者さんを多くこなさなくてはならない保険診療から、じっくり診察できる自由診療中心へ切り替え、まずは患者さんと向き合うことにしたのです。そんな折「虫歯ができる患者さんとできない患者さんでは食生活が異なるのではないか」と考え、患者さんを対象に食事に関するアンケート調査を行いました。予想通り両者で食生活がまったく異なるということがわかりました。さらに学校歯科医をしている2つの小学校の協力を得て、「食事にかかる時間・1日の食事の回数・食べる時間帯」などのアンケートも行い1000件近い回答を得ました。そこから見えてきたものは、虫歯の多い患者さんや子どもたちは、砂糖を含む食品を非常に多く食べていたということです

予防歯科プログラムの重要性

 私が患者さんに治療を施す際に重点を置いているのは「予防歯科プログラム」です。歯科大学では内科や外科一般基礎医学を勉強してきています。口の中だけ治して「はい、終わり」ではもったいないことです。
口の中を見て体の健康状態を確認したり、逆に体の不調の原因が口の中や歯にあるかもしれないと予測することは歯医者としての役割が大きいと思います。
ちなみに私は「SKY 10」という機器を使って各臓器の活性度やミネラルバランス、自律神経、ストレス、血管年齢など全身の健康状態を測定します(資料1)。とくに歯周病などは生活習慣病と直結しているため、各臓器の活性度や血管年齢を測定することで、食事指導の際の重要な基準になります。初診の患者さんには、たっぷり1時間以上をかけ、口の中だけでなく全身の健康状態の診断を行っています。

資料1

資料1

口と体はつながっている

〝象牙質の液体移送  システム〟で口と体は  つながっている

 歯からつながる体の病気に「病巣感染」があります。体のどこかに巣(原病巣)があり、これが原因で菌が全身に運ばれることで他の臓器に感染、病気を引き起こすことがあります。その病巣が歯や歯の根っこの部位にできて体の病気につながることを「歯性病巣感染」といいます。
たとえば虫歯は食べかすに細菌がくっついて酸を出し、歯の表面を少しずつ溶かして奥へ奥へと進んでいくのが虫歯だと言われています。もちろん間違いではないのですが、この説だけでは説明できない虫歯があります。歯の表面から見ると黒ずんだり穴が開いている様子もなく、一見すると虫歯のない健康な歯のように見えます。しかし、レントゲン写真で見てみると歯の内側が溶けて神経まで達している。こうした症例は歯医者の現場ではよく見られます。
では、こうした虫歯はどのように進んだのか? その原因は人間の体の中で働くシステムと関係があります。
アメリカのラルフ・スタイマン博士が発見した「体を流れている物質は、やがて歯の神経を通り歯の表面に出てくる」ことを実証した論文に、虫歯ができる原因として「象牙質の液体移送システム」が大きく関係していると書かれています(資料2)。
象牙質の液体移送システムとは、脳下垂体視床下部からの指令が耳下腺を経由して伝わると、液体が歯の神経から象牙細管エナメル小柱間を通って歯の外側へ流れ出る仕組みになっていて、システムが正常に働いていれば虫歯菌は歯の内側に侵入できません。さらに博士の実験では、「体内から口の中へと液体が運ばれていく流れが、内分泌系の機能の低下や偏った食生活、ストレスによって滞ったり逆流する」ことがわかったとあります。
つまり体内の物質が歯を通って口の中に流れるだけでなく、口の中の無数にいる虫歯の原因となる細菌が、歯の表面を溶かすことなく内側に流れ込み、場合によっては体内に流れ込むこともあるということを意味しています。

写真2

象牙質の液体移送 システム図解(資料2)

口臭は免疫力の低下が原因!

 口臭の強い人は、内臓の機能が弱っていたり免疫力が低下している可能性があります。というのも口の中は常に外気にさらされ、腸内の約 10倍もの細菌がいます。そのため免疫力が落ちると細菌の数がてきめんに増え、歯垢が付きやすくなったり、歯周病の状態が悪くなるなど、口の中の状態が悪化することで、いつもより口臭が強くなったりします。人は病気になるまで健康についてあまり気にしていませんが、虫歯や歯周病になり歯医者に行くことで体調の不具合、あるいは病気の一歩手前にあることに気づくきっかけになるかもしれません。そのためにも、私たち歯科関係者は全身の病気について常に勉強していかなくてはなりません。
虫歯や歯周病と体の健康状態について、長年研究を重ねていますが、驚くべきことがわかってきました。
それは口の中の病気とがんの原因が同じであるということです。がんはこれまで遺伝子の突然変異によって、できると考えられてきましたが、最近では生活習慣病のように、日常生活や健康状態が大きく影響していることがわかってきました。
私たちは体を動かすエネルギーとしてお米や芋、小麦粉などの炭水化物を食べ、ミトコンドリアと呼ばれる細胞小器官によって酸素を使って炭水化物を分解しますが、この炭水化物が体に必要な量を大きく上まると分解が間に合わなくなってしまいます。そこで、この働きを助けようとして生まれるのが、〝原核細胞〟です。
この原核細胞は大腸菌と同じような単純な構造をしているので、放射線や紫外線、薬、ストレスなどの影響をとても受けやすいという弱点があります。本来、人間の細胞は簡単には変異しないのですが、この原核細胞は簡単に変異します。こうして生まれたのが、がん細胞です。
炭水化物を食べすぎなければ、原核細胞は生まれませんし、また生まれてしまったとしても、先ほど述べた刺激(放射線、紫外線、薬、ストレスなど)さえなければ、がんに変わることはないのです。
その人の健康状態を知る上で、私がもっとも注目しているチェック項目の一つに患者さんの唾液のPH検査があります。PH検査を始めたころは、歯に着色しやすい人とそうでない人の違いはどこにあるのか、特定の食べ物が原因ではないかと思いましたが、それらしいものは見つかりませんでした

唾液のPH検査からわかること

 そんな折、酸性体質とアルカリ性体質に関するドイツの論文に「酸性体質の人は歯が着色傾向にあり、唾液も酸性で自らの唾液で歯の表面を溶かし、ザラザラにしてしまうことで色素が着色しやすい」とありました。
そこで着色しやすい患者さんの唾液のPHを調べてみると、確かに着色のある患者さんは酸性体質の人が多く、しかも虫歯ができやすい傾向にありました。さらにクリニックにがん患者さんが紹介で来院されたのですが、歯の着色がかなりあり、唾液PHを測定すると極端に酸性に傾いていることがわかりました。
その後も、多くのがん患者さんの唾液検査を続けましたが、全員がPH5台という数値だったのは驚きです。実は、うつ病や慢性疲労、糖尿病などの症状のある人のほとんどが、PH値が低い酸性体質を示します。もちろん病気治療のための薬の影響がないとは言い切れませんが、アルカリ体質を示す人のほとんどが健康だったという結果にも驚かされました。

アルカリ性体質に戻す食生活

 クリニックでは、口の中の細菌の 検査も行います。「POICウォーター」(次亜塩素酸《HClO》という成分を高濃度の塩と水を電気分解して作った電解機能水)を使い、口の中の菌と反応することで塩素イオンを出す性質を利用し塩素イオンが増えて酸性を示すというものです。
具体的には一定量を口に含んで約30秒間うがいをし、吐き出したもののPH値を測定します。その値がPH5〜6であれば口の中の細菌はかなり多い、PH7〜8であれば少ないということになります。
余談ですが、私は 20年以上前から野菜中心の食生活を続けています。世の中には、疲れを取るため、スタミナをつけるためにと言ってお肉を食べる人がいますが、これは逆効果で、かえって疲れやすくなることがわかっています。というのも肉を食べてからアミノ酸に分解されるまでに大量のエネルギーを消費してしまうからです。もし疲れがたまったな、と思ったら肉ではなく野菜を中心に食べることをおすすめします。

余分な炭水化物は 脂肪に変換される

最近、糖質制限ダイエット、炭水化物ダイエット法が流行っています。患者さんに「シュガー・コントロール」をすすめている私にとっては追い風となりお話しやすいのですが、なぜ、昔から日本人が食べているお米が悪者になってしまったのかと疑問に思う人もいらっしゃると思います。
そもそも私たちの祖先は長い歴史の中で常に食べ物がない、いわゆる飢餓状態にさらされてきました。そのため私たちの体は炭水化物を摂るとレプチンというホルモンを分泌し、炭水化物を脂肪に変えて体に蓄え、しばらくご飯が食べられなくても生きていけるよう、次にくる飢餓に備えているのです。
ところが日本人の食事はどんどん西洋化し高カロリーのものを食べるようになり、お米以外からも十分なエネルギーが摂れるようになったのです。それにも拘らず、従来通り炭水化物を食べ続けるから、炭水化物はどんどん脂肪に変換され、体にたまってしまうというわけです。お米が最初から悪者だったわけではなく日本人の食生活が変わりすぎたのが原因です。

自然治癒力で治すドックベスト療法

 2011年のTBSテレビ番組「世界のスーパードクター」のテレビ取材をきっかけに「ドックベストセメント療法」が広がり始めました。
私の食事療法の師匠であり、アメリカ・ヒューストンで活躍中の松田麻美子氏(自然健康 ・治癒学博士)から「虫歯を自然に治してくれるセメントがある」と聞いたときは、正直「セメントで虫歯が治るわけがない」と疑心でしたが、もし本当に虫歯が治るなら……と半信半疑ながら試してみると、本当に虫歯が自然に治ったのです。これはすごい可能性を秘めたセメントではないか!そう直感した私は、ヒューストンの開発元Cooly&Cooly社に飛び、正式にドックベスト療法を学んできました。
これこそ、私が長年探し求めてきた「削らない虫歯治療」を実現する薬だと確信しました。
ドックセメント自体は 19世紀後半にすでに登場していました。その前身は「カッパーセメント(銅セメント)と呼ばれるもので、年配の方の口の中に治療の痕跡をみることがあります。歯にかぶせてある金属の冠を外し中に赤いセメントが詰めてあれば、それがカッパーセメントです。この治療痕をみた歯科医ドック・ホリディ氏は、かぶせた金冠の下には虫歯ができていないことに気づき、そのメカニズムを研究するなか、このセメントに含まれる銅の抗菌作用が働いていることをつきとめました。その後、新型のセメント、ドックベストセメントをアメリカの歯科医ティム・フレイザー博士がカッパーセメントとコーパライトという象牙細管封鎖液を組み合わせて虫歯を再石灰化することを発見しました。このセメントを虫歯の患部に塗布すると、虫歯菌に感染した部分を除菌しつつ、歯の成分であるミネラル成分を補充し再石灰化を促進します。ミネラル成分自体には薬剤的要素はほとんどありませんので、まさに自然治癒力を活かした治療法と言えます。
ドックベストセメントの主な成分は、酸化亜鉛 73%・酸化マグネシウム6%・ビスマス5%・シリカ4%・酸化鉄3%・銅2%・塩化銀1%です。これにカルシウムとリンが加われば歯の成分になります。つまりドクッベストセメントは、歯が再石灰化するための栄養素の塊ということです。ドックベスト療法には次のようなメリットがあります。

①治療時間が短時間で終わる
②成功率が高い( 90%以上)
③治療の痛みがほとんどない
④通院回数が少ないためトータルでの治療費が安くすむ
⑤歯を削らなくてもよい
⑥治療にかかる時間は約 10分。実質治療は1回。

まず、虫歯の穴をきれいに洗浄したあと、ドックベストセメント粉末とコーパライト溶剤を混ぜ合わせたペーストを虫歯の穴の中に塗り付けます。ドックベストセメントの成分である銅と鉄のイオンが歯の中を通っている象牙細管(無数の管)の中に浸透し、虫歯菌が死滅し無菌状態になります。さらにドックベストセメント粉末と付属の液を練った粘土の高いものを穴に埋めて5分ほど待ち、固まったら被せものなどでフタをして治療は終わりです。

スーパーDr.小峰一雄のライフワーク

削らない・痛くない・わずか 10分

レーザー治療を併用

 残念ながらデメリットもあります。歯の神経の炎症がひどく痛みがある場合、ドックベスト療法ですぐに痛みを取り除くことができない場合もあります。そこでクリニックではレーザー治療 Streak Lazer (ストリーク・レーザー) を導入しています。先端から2700℃以上もの熱を発し、さまざまな波長の特殊な光を利用した治療法で、このレーザーを使
って速やかに炎症を抑え、痛みを和らげることができる方法を独自に発見しました。私が使っているレーザー光は、ネオジウム・ヤグレーザーといって波長は1064ナノメーターと近赤外線に近い波長を持っています。この光を患部に照射すると血管内に一酸化ちっ素が発生し血管が拡張することで血液の流れが速くなり、治癒効果が早まることがわかりました。しかしその部位が炎症を起こしている場合は血管を拡張させるとかえって痛みを引き起こす可能性があるため、「 L.L.L.T ( Low reactive Level Laser Therapy )低レベルレーザー治療法」を使います。限界内での高出力のレーザーを照射することで痛みを伴うことなく炎症が抑えられます。歯茎の炎症で顔が腫れてしまった場合、数日は腫れが治らないのがふつうですが、この治療を行うことで、すぐに痛みが和らぎ腫れも治ります。

用意するのは、ドックベストセメントの粉末


ドックベスト療法は、永久歯であれば子どもにも施すことができます。一生使う大事な歯を削らず、痛みも与えずに治すことができるのですから、長年歯科医をやってきて、これほど画期的な治療法は他にはないとしか言いようがありません。
とは言えドックベスト療法は万能ではありません。すぐに虫歯が完治するわけではありません。自然治癒には長い時間がかかります。だからこそ、体の状態を健康に維持するためにも食生活の見直しと「予防歯科プログラム」を併用していただきたいと思っています。

ドックスベストセメントセミナー講習会